でいご法律事務所
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有責配偶者からの離婚請求??
有責配偶者(たとえば不貞行為をした側)からの離婚請求が認められるか,という問題です。
有責配偶者からの離婚請求が認められるのは,最高裁判例(S62.9.2)によると次の3要件を満たす場合です。
①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
②未成熟の子がいないこと
③相手方が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認めることが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと
①別居期間が相当の長期間に及ぶことって,
具体的にはどれくらいですか?
10年以上なら相当の長期間と判断されています。
10年未満の場合は,同居期間との対比において判断されています。
②未成熟子の不存在というのは,
未成年の子がいないことという意味ですか?
未成熟子とは,経済的に独立して自己の生活費を獲得すべきものとしていまだ社会に期待されていない年齢にある者で,
未成年と同義ではありません。
たとえば,中学を卒業して働いているなら15歳でも未成熟子ではありませんし,
逆に大学院に通っているなら22歳でも未成熟子と言えます。
ただ裁判例を見ると,未成熟子がいれば絶対に離婚を認めないというわけではなく,
他の要件との関係によるようです。
具体的にはどんな場合に離婚が認められているのですか?
最高裁第3小法廷H6.2.8をご紹介します。
事案の内容:夫と妻の間には4人の子がいる。
夫は会社の経営に行き詰まり,家出して行方をくらませた。妻は4人の子を育て夫の帰りを待っていたが,
子らが幼いため仕事も思うようにすることができず,自宅は競売され,生活保護を受けるに至った。
一方夫は,女性と知り合い同棲を始めた。
その後,夫に対し婚姻費用として毎月17万円等の支払いを命じる家庭裁判所の審判がされ,夫は妻に対して毎月15万円等を送金している。
4人の子のうち3人は成人して独立しており,残る1人が高校2年生。
高校2年生ってことは未成熟子ですよね。
はい。
ただ裁判所は,夫が有責配偶者であることは明らかであるが,別居からすでに13年余りが経過し,相当の長期間に及んでいる。
4人の子のうち3人は成人して独立しており,残る子は高校2年生で未成熟子ではあるが,
3歳の幼少時から一貫して妻の監護の下で育てられて間もなく高校を卒業する年齢に達している。
夫は妻に毎月15万円の送金をしてきた実績から子の養育にも無関心であったわけではない,などとして夫からの離婚請求を認めました。
次に,東京高判H9.11.19をご紹介します。
夫と妻は,約6年間の共同生活を経て,その後現在まで約13年間別居生活を続けている。夫には婚姻関係を回復させる意思が全くないことから,婚姻関係を回復することは著しく困難。
しかしながら,婚姻関係がこのような状態に至った原因は,専ら,夫が他の女性と深い関係を持ち,妻や親族が諫めるのも聞き入れず,突如として家を出て別居するなどした夫の責に帰すべき行為にある。
二人の間の子は現在高校3年生と中学2年生に達しているものの,なお未成熟子。
夫は,別居後現在まで月々の送金のほか,折に触れて子供たちの教育費用等の送金をしており,今後も子供たちが大学を卒業するまでは同程度の生活費及び教育費の負担をする意思を持っている。
しかし,月々の送金については妻と子供たちの生活費を賄うのに十分ではなく,妻の実家の少なからぬ援助により妻と子らの生活が支えられている
(夫は月額約80万円の給与のほか賞与を得ている。夫は妻に毎月25万円の送金をしているが,家賃を控除すると10万円に満たず,妻の実家から毎月20数万円の援助を受けている)。
結論として,信義誠実の原則に照らし,夫からの離婚請求を認めないとしました。
さっきの裁判例は子が高校2年生ともうすぐ高校を卒業する年齢だけど,
これは中学2年生の子がいるということで離婚が認められなかったのでしょうか?
その点に加えて,夫が妻に支払ってきた生活費が十分なものだったかどうか,
という点も考慮して,離婚を認めるか認めないかの違いが出たようですね。
2016年05月20日(金)
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